先日、ある薬品メーカーの営業の方がお店に入ってくるなり、ゴホン!ゴホン!
マスクをしているもののひどく咳き込み、目も虚ろ。
「(そんな状態で)来なくてもいいのに」と言ったら、「今日は薬が欲しくて」と。
以前も風邪の症状がすっきりと治らないと言われたときに、これを飲んでみたらとすすめたところ、結果が良かったのでまた何かお願いしますとのこと。
それにしても、どう見てもまだまともに仕事ができる状態でないのに、休んでいられないのは日本の悪習なのでしょうか。
(※このブログ記事は、コロナ禍が始まる以前に書いたものです)
あるドイツ在住の日本人の方が、風邪をひいたとき医者に「薬をください」と言ったら
「薬は出ません。風邪で必要なのは薬ではなく休養。診断書を1週間出しますので仕事を休んで寝てなさい」と言われ、とても驚いたとツイッターで呟かれていました。
日本では仕事や学校を休むのも一苦労。
昔だと「熱がないなら出社しろ!」なんて言われた人もいるのではないでしょうか。
昔はとにかく、熱が有るか無しかで決めるような風潮がありました。
そのせいで、とにかく熱を下げればいいと解熱剤を不必要に使って悪化させたり。まるで熱があることが悪いみたいな。
<熱は生体防御反応です>
それに体温は個人差がありますし、熱以外の症状も診ることが大事で、本人が辛かったら休むという考えが正しいです。
それでも「仕事を休むと周りに迷惑が」とか、家にいる人も「風邪くらいで寝てられない」と無理に動き回って長引かせてしまうは、日本人が真面目すぎるのか、昨今話題になっている「過剰適応症」の一つなのかもれません。
※過剰適応症とは、「自分を犠牲にしてでも周りに合わせようとして、必要以上に無理をしてしまい、心理的な辛さを密かに抱えてしまう症状のことです」
「調子が悪いので病院に寄ってから会社に行きます」と言う人もいますが、それも間違いです。
病院に寄ったからと行ってすぐに治るわけでもなく、症状が酷くなっていくときに会社に行ったら皆にうつしてしまうからです。
でも「調子が悪いので休みます」なんて言うと「病院には行ったのか!」などと問いただされたりもするので、難しいところですね。
昨今、インフルエンザに振り回されてしまう人も多いですが、うちの家族も例にもれず。
一昨年、長男が高校2年生のとき、風邪をひいて熱を出しました。
普段なら「家にある薬を飲んで寝ときなさい。そうすればすぐ治るから」で済むのですが、その頃「インフルエンザと証明できれば、”欠席扱いにならない”」というルールができていました。
インフルエンザではないと感じたのですが、高校2年生で欠席数が進路に響くことを懸念して、仕方なく内科に行き検査を受けましたら、結果は陰性。
先生が「あれ? おかしいな~、絶対インフルエンザだと思ったのに。きっともう1回検査したら出るはずだから、また明日来て」と言われ、また次の日も学校を休んで病院に。
結果はまた陰性。
結局、普通に欠席扱いとなり、次の日慌てて学校に行きました。
こんなことをしてると、シーズン中は検査目的の人がいっぱいで病院が人で溢れてしまうことになります。
風邪だろうとわかってて病院に行けば「(たぶん)風邪です」と診断されるだけなので、症状が重くなければわざわざ病院に行って待たされるより、家で寝てた方が早く良くなります。
風邪を治すのは薬ではなく、私たちの身体に備わっている免疫力だからです。
「これはただの風邪や腹痛ではないな」という緊急時こそ、急いで病院にかかるべきです。
そういった方達の為にこそ、待合室を空けておくべきだと私は思います。
そんなことを書いていたら、つい先日私も風邪をひきまして。
営業の方が目の前でゴホゴホしていたからうつったというよりも、休みの日に自宅洗面所で裸になって自分の髪の毛を切っていて、全身を冷やしたことが原因だと思います。
その次の日の朝、カレーライスを食べていたら唇を噛みました。
もし普段、唇を噛むことはないのに噛んだとしたら注意信号。
体に異変が起きているということです。
漢方の診察では「望診」というものがあります。
顔や舌や目をチェックしたり、爪や肌、髪質を見ることで、どんな異常があるかを判断します。
ご自分でも詳しい知識がなくても、いつもと違うことに気づくことはできます。
見た目だけなく私のように唇を噛んだり、体の一部の動作がおかしかったり、普段と違うと感じたら病気の予兆を疑ってみましょう。
日頃のセルフケアと、迅速な対応が肝心です。
私はその後、普段はこらないはずの肩が張っていることに気づき、お昼頃になるともう目の奥が熱いような痛いような。
それで、これは間違いなく風邪だなと判断しました。
早速、漢方薬を組み合わせて飲みました。
おかげで頭の痛みが和らぎ、その後も漢方薬や自然生薬で栄養補給。
その日の夜は、9時30分ごろ、いつもより暖かくして寝床に入りました。(いつもは11時過ぎです)
子供が調子悪そうな時に「早く寝なさい」と言ってもなかなか寝ようとしないので、普段から親が「調子が悪い時は早く寝て休むことが大事なんだ」という姿勢を見せなければいけません。
そんなこんなで、あれやこれやを服薬していたら、次の日午後には寛解していました。
改めて思うのは、病気を治す為には、努力が必要だということです。
例えば、療養の為に予定を変更したり、やりたいことを控えなければならないこともあるでしょう。
又、食べたいものを食べないように我慢したり、これまでやってこなかった身体に良い習慣を続けなければならなかったり。
そして、病気を治す為には、お金もかかります。
風邪程度であればほんの少し短期間の努力で済みますが、大きな病気であればあるほど、病気を治すためには多大な努力が必要となります。
病気は誰かに治してもらうのではなくのではなく、自分自身が治すもの。
手術が必要な病気であっても、痛みに耐え傷を癒したり、リハビリや辛い治療を続けるのは自分自身。
そして治療に携わる側の人間は、その頑張る姿勢を敬い、気遣い、共に取り組むこと。
「よし、まずはやってみよう」「続けてみよう」と思って頂けるよう、身体の事、病気や健康の事、漢方薬の事、食べ物の事、養生方法の事、そして心の事を日々学び、より良い対話ができるよう取り組んでいきたいと考えております。